三代目の不思議体験


− 第一話 −
 


 橋本酒店三代目が実際に体験した不思議な出来事です。
 もちろん、創り話ではなく実話です。


 
それは今から30年近く前の事、建て直す前のわが家での
 出来事でした。

 当時のわが家は長方形の敷地にL字型の二階屋で、庭が
 ありました。庭には池もあり縁日の金魚すくいでとった金魚が
 数匹おり、時々エサをやる程度でしたが、かなり大きく育って
 いました。

 僕はその池の真上に位置した二階の部屋で寝起きをして
 いましたが、そこは家族の部屋とはちょっと離れており、
 もし 子供であれば一人では寝られないないような怖さを
 感じる部屋でもありました。

 が、当時の僕はもう子供ではありませんでしたし、今も昔も
 霊感は全くなく、何ら恐怖を感じる事はありませんでした。


 そんなある夜、僕は赤ちゃんを抱き上げる夢を見ました。

 しかし、赤ちゃんだと思って抱き上げたものはおぞましくも
 鳥のひなにそっくりな奇形児。

 大きさこそ赤ちゃんでしたが、ぬめっとした体にどす黒く
 赤茶けた皮膚。髪の毛は生えておらず、頭蓋骨の形が
 分かるほどに痩せこけ、血管の浮き出た顔にはクチバシ。
 手には指が無く、足は木の枝のように細く鳥そのもの。

 そのあまりにもグロテスクな映像は夢であるにも関わらず
 脳裏に深く焼き付き、目が覚めた後もあたかも体験したか
 の如く鮮明に覚えており、「何か不吉なことが起こる予知夢
 なのだろうか」との不安に駆られました。

 そして、ことあるごとにあの夢で見た奇形児を思い出して
 しまい、それまで何とも思っていなかった部屋の壁や天井の
 シミでさえ何か得体の知れない物のように感じられるように
 なってしまいました。

 そんな不安な日々を送った二日後。


 気分転換に久々に池の金魚にエサをやろうとして池を
 のぞき込んだ先に見たものは・・・。

 池の底に沈んで、立ったまま死んでいる鳥のひなでした。

 それは、あの夢で抱き上げた奇形児そのもの。手(翼)を
 上げ、まるで抱き上げられるのを待っているようにも見え
 ました。

 上を見上げるといつからあったのか、そこには鳥の巣。

 その瞬間、全てが理解できました。

 つまり、あの夢は巣から転げて池に落ちたひなが、持てる
 力の全てを振り絞り、一番近くで寝ていた僕に『抱き上げて
 助けて』と送っていたテレパシーだったのではないかと・・・。


 その時の衝撃は今でも忘れません。

 その後は言うまでもなく、鳥のひなを池からすくい上げて
 (さすがに抱き上げる事は出来ませんでしたが)庭に埋め、
 お線香をあげて、ねんごろにともないました。

 今でも時折、あの夢やひなの事を想い出します・・・。


 最新の科学では幽霊や臨死体験は金縛りと同様に脳が
 創り出す幻覚であるとの研究報告があるそうです。

 僕は前述の通り、霊感は無く、その説にもうなずけます。

 だとすると、僕が見たあの夢もテレパシーなどではなく、
 単なる偶然だったのかも知れません。池の底でひなが手(翼)
 を上げていたように見えたのも骨格の構造や水圧によるもの
 で偶然が重なっただけなのかも。

 しかし、単なる偶然や幻覚とは思えません。後にも先にも
 鳥のひなを抱き上げる夢など見た事がありませんから・・・。


              株式会社 橋本酒店 三代目





− 第二話 −
 


 次の話しは僕の祖母(橋本酒店初代女将)が体験した
 不思議な出来事で、両親から聞いた実話です。


 
これも、今から30年近く前の出来事です。

  
 当時、祖母は病気で長患いをしており、大学病院に入院
 していました。(祖父はその数年前に亡くなっています。)

 その入院中、突然、義理の兄が病に倒れ、あっけなく
 この世を去りました。

 実は義理の兄と言っても単に祖父のお兄さんという縁だけ
 ではなく、実の姉の夫でもありました。

 つまり、はじめに祖母の実姉が義兄と結婚。それが縁で
 そのお互いの妹と弟である祖父母も結婚したという絆深き
 兄弟姉妹でありました。

 しかし、闘病中の祖母に「義兄が亡くなった」など言える
 はずもありません。

 祖母にはその事を伝えず、お葬式が執り行われました。


 お葬式も終わり、一段落した頃、両親が祖母のお見舞いに
 病院に行ったところ、祖母が開口一番こう言ったそうです。

 「この前、お義兄様がお見舞いに来てくれた」と・・・。

 しかし、なぜか病室には入らず、何も言わずドアのところで
 微笑んでいたそうです。

 そんなはずはありません。その頃すでに義兄はこの世には
 いませんでした

 では、祖母が見たものはいったい何だったのか?

 それは、『祖母の身体を案じ、最後のお別れにと、魂となって
 現れた義兄だった』のかもしれません・・・。

 それから数ヶ月後、祖母もあの世へと旅立ちました。


       橋本酒店初代女将
  


              株式会社 橋本酒店 三代目





− 第三話 −
 


 三つ目の話しは僕の妹が体験した不思議な出来事で、
 本人から聞いた実話です。


 
これも、今から遡ること30年近く前の出来事で、当時、
 飼っていた柴犬と高校生だった妹にまつわる話しです。

 その頃、わが家では柴犬を飼っていましたが、子犬の時
 にペットショップで買ってきて15年ほど経っていました。

 そんなある日、どうも柴犬の歩き方が不自然に感じられた
 ので、当時、祐天寺にあった動物病院(すでに廃業)の
 獣医さんに診てもらったところ肝臓癌が見つかりました。
 それも末期の。

 しかし、犬にとっては高齢ゆえに手術も出来ず、非情にも
 余命宣告を受けてしまいました。

 なぜ、もっと早く気づいてやれなかったのかと悔やみました
 が、為す術もなく、獣医さんに「安楽死の選択もあります」
 と、言われるがまま、お任せする事となりました。

 つまりそれは、“病院で預かり、延命措置はするけれど、苦し
 むようなら安楽死させる”というもので、今なら「家で看取る」
 という選択肢もありますが、当時は情報もなく、安易にそれ
 を受け入れてしまいました。

 痛々しい姿で動物病院に運ばれていく柴犬を見送った後、
 それが、生きて会える最後になるかも知れないと妹は悟り、
 とても悲しがり、かなり落ち込んでいました。

 妹が物心ついた時からずっと一緒にいた柴犬でしたから・・・。


 その翌日の事。

 落ち込む妹が高校へ登校しようと最寄りの祐天寺駅まで
 歩いて行くと、前から突然、動物病院にいるはずの柴犬が
 ゆっくりと歩いてきたそうです。

 妹は“柴犬が動物病院から脱走して家に帰ろうとしている”
 と、瞬時に思ったそうですが、あまりにも突然のことに動揺
 して、声も掛けられずにいると、その柴犬はそのまま妹と
 すれ違っていったそうです。

 しかし、気を取り直してすぐに振り返ってみたそうですが
 その柴犬はどこにもいなかったそうです。

 その日の昼過ぎ。妹が学校に行っている間に獣医さんから
 電話がありました。「今朝、柴犬を安楽死させました」と・・・。


 夕方、学校から帰ってきた妹に安楽死のことを伝えると、
 妹は今朝起きたその不思議な出来事を話し始め、家族全員
 の知るところとなりました。

 とすると、朝、妹が見たもの何だったのか?

 それは、『悲しむ妹を心配し、最後のお別れにと、魂となって
 現れた柴犬だった』のかも知れません・・・。

  
 その柴犬は今、深大寺の動物霊園で安らかに眠っています。


          飼っていた柴犬 3歳頃


              株式会社 橋本酒店 三代目



− 総 論 −
 


 
さて、三つの話しは全て実話です。


 最初の話しにも書きましたが『最新の科学では幽霊や
 臨死体験は金縛りと同様に脳が創り出す幻覚である』との
 研究報告があるそうです。

 NHKでも怪奇現象や不思議体験に関する検証番組を
 度々放送しているので、ご覧になった方も多いと思います。

 例えば臨死体験。

 重い病にある人が意識のない(寝ている)状態の時に
 広い野原や大きな川を進んでいくと、亡くなった肉親が、
 その前に立ちはだかり「こっちに来るな!」と追い返す。
 そして目が覚めるというものです。

 広い野原や大きな川というものから連想されるのは、現世
 との境界線。すなわち「三途の川」的なもので、その先に
 あるのは「あの世」。

 つまり、あの世に足を踏み入れようとするのをすでに
 亡くなっている肉親が必死で食い止め、現世に戻した・・・。
 と、誰でも解釈できます。

 しかし、それを否定する科学者は、それはあくまで脳が創り
 出した幻覚や夢であると。

 “自らの身体のダメージ(高熱等々)に脳が過剰反応し、
 死ぬかも知れないと無意識に思い込み、普段から脳裏に
 ある三途の川のイメージと結びつけ、すでに亡くなっている
 肉親を夢に登場させたのではないか”といった具合です。

 実は僕の母も小学生の頃、はしかで高熱にうなされて
 いた時に同じような夢を見たそうです。しかし、死ぬような
 病気ではないし、生死の境を彷徨っていたわけでもない
 そうなので、やはり、臨死体験ではなく、単なる夢だった
 のでしょう。


 科学者の手にかかれば臨死体験のみならず、この世で
 起こっている様々な怪奇現象や不思議な現象も全て科学で
 解明されそうです。

 祖母の話は“義兄に会いたいという祖母の脳が見せた幻覚”
 または、“義兄がまだ元気な頃にお見舞いに来てくれた時の
 記憶が混同したもの” と言われそうです。

 妹の話も“もう一度、柴犬に会いたいと思った妹の脳が見せた
 幻覚”、または、“野良犬かどこかの飼い犬が逃げ出したもの”
 とでも言うのでしょうか。

 そうなのかも知れません・・・。
 僕も心霊現象的なものには懐疑的です。

 そして、このような不思議体験をされた方も少なくないと思い
 ますが、それらは脳が創り出した幻覚なのかも知れません。


 しかし、義兄が幻覚や記憶の混同であったならば、病室に
 入ってきて、楽しそうにお喋りしても良さそうなものです。

 なぜ、何も言わずにドアのところで微笑んでいたのか。

 義兄は何も“言わなかった”のではなく、“言えなかった”
 のではないか。それが物理的に言葉を発することの出来
 ない魂であったから・・・。


 柴犬も野良犬やどこかの飼い犬が逃げ出したと言うのは
 あり得る話しです。しかし、振り返ると、その柴犬はどこに
 もいなかったのは、それが実態を伴わない魂であったから
 なのでは・・・。

 科学では説明できない事もあるような気がします。


 最後になりますが、臨死体験が幻覚や夢であるなら、肉親の
 制止を振り切って、その先に進んだとしても、何の問題もなく
 目を覚ますことが出来るはずです。

 であるなら、肉親の制止を振り切って進んだその先には何が
 あるのか見てみたい。天国なのか地獄なのか。

 しかし、もし、自分にそのような夢を見る時が来たとしても
 その先に進む勇気はありません。

 そこには、二度と目を覚ますことが出来なかった人達が大勢
 いるかも知れませんから・・・。


              株式会社 橋本酒店 三代目


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